発達障害への配慮は、法律で決められた「学校の義務」です。
-
<目次>、学校がいじめに対応しない時の対抗策
- 1、学校がいじめの発生を認めない。
- 2、「いじめ」とは、どんな行為なのか。
- 3、いじめの定義の移り変わり
- 4、「いじめ」への対応は法律で決まっている。
- 5、いじめに対応しない学校への対抗策
- 6、まとめ、いじめに対する措置
1、学校がいじめの発生を認めない。
残念ですが、障害に理解のない先生の場合には、よくあることです。
発達障害や知的障害が原因でいじめを受けているのに、学校が対応してくれない。
いじめられたと子供から聞いて、学校の先生に相談しても、先生がいじめと認めない。
そんな時に、学校の先生が言うのが、こんなセリフです。
- 子供同士の単なる悪ふざけ、いじめじゃない。
- これくらいは、深刻ではないので、いじめじゃない。
- いじめの芽、いじめの兆候、まだ、いじめじゃない。
- こんなことまで、いじめなら、切りがない。
- 精神的な苦痛はないので、いじめじゃない。
- 1回だけで、継続性がないので、いじめじゃない。
- 一方的ではないので、いじめじゃない。
- 弱い者ではなく対等の関係なので、いじめじゃない。
- やった子に悪意がないので、いじめじゃない。
- 攻撃的な行為ではないので、いじめじゃない。
- すぐに謝らせて仲直りさせた、もう解決済み。
- いじめに発展する前に、解決した。
- 学校以外で起こったことなので、いじめじゃない。
- 学校は把握していないので、いじめじゃない。
いじめを学校の先生に相談しても、相手にしてくれない。
2、「いじめ」とは、どんな行為なのか。いじめの定義
いじめとは、どんな行為かは、法律で正式に決まっています。
いじめの定義は、「いじめ防止対策推進法」の第2条第1項にあります。
「いじめ」とは、どんな行為なのかは、この法律によって決められています。
いじめ防止対策推進法
この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
いじめの定義、4つのポイント
いじめ防止対策推進法第2条で決められた、いじめの定義には4つのポイントがあります。
- 1、子供同士の行為である
- 2、子供同士に、一定の人的関係がある
- 3、心理的又は物理的な影響を与える行為
- 4、対象となった子が心身の苦痛を感じている
このように、いじめの定義のポイントは4つだけです。
子供同士の行為であることが1つ目の条件です。先生が子供をいじめるのは、法律的には、いじめではなく、単なる犯罪行為となります。
子供同士であっても、2つ目の条件に当てはまらない、見知らぬ他人への、攻撃はいじめではありません。それは、単なる犯罪行為です。
3つ目の条件は、心理的でも物理的でも、どちらでも人に影響を与える行為なら、なんでもいじめになります。
4つ目の条件が重要で、対象となった子が、心身の苦痛を感じれば、いじめになることです。いじめた加害者がどう考えていようと、いじめを受けた被害者が心身の苦痛を感じれば、なんでもいじめになります。
ちょっとした悪口でも「いじめ」になる。
いじめを受けた子が苦痛を感じれば、それは「いじめ」です。
例えば、同じクラスの子に悪口を言われて、嫌な気持ちになった。
その嫌な気持ちが、言われた子にとって、苦痛ではない程度なら、いじめではありません。
しかし、ちょっとした悪口でも、言われた子が、苦痛だと感じれば、それは1から4の条件を全て満たすので「いじめ」です。
言った子に悪気がなくても、言ったのが1回だけでも、関係ありません。法律が定める正式な「いじめ」なんです。
すぐに謝って、苦痛を感じなければ、いじめじゃありませんが、すぐに謝ろうが、苦痛を感じれば、いじめです。
ちょっとした悪口などは、成長過程にある子供が、学校で集団生活する上で、どうしても発生するものです。
そのため、些細な行為のうちに、いじめを積極的に認知して、早期に学校全体で対応して、解決していくことが、現在の指導方針になっています。
自分の学校の、いじめの件数が増えることが不安な先生のために、東京都のいじめ総合対策では「いじめの件数が多いことをもって、その学校や学級に課題があるという捉え方をしない」と決めています。
いじめの件数が多いのは、悪いことじゃなく、意識が高くて良いこと。
3、以前の「いじめ」の定義、いじめの定義の変遷
いじめの定義は、現在と過去では違っています。
いじめ防止対策推進法は、平成25年にできた法律です。
この法律ができた背景には、滋賀県大津市の中学生が、いじめによって自殺したことへの、学校や教育委員会のずさんな対応に、社会的な批判が集まったことなどがあります。
この法律ができる以前までは、「いじめの定義」は、文部科学省が決めていて、今と違っていました。
そのため、ベテランで年配の先生の場合には、昔の発想のままで、現在のいじめの定義を正確に理解していないことがあります。
これまでの「いじめの定義」の変化を知って、なぜ学校の先生が、間違った考えなのかを理解しましょう。
平成18年の「いじめ」の定義
個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。
「いじめ」とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。
なお、起こった場所は学校の内外を問わない。
この平成18年のいじめの定義でも、積極的ないじめの認知には、不十分。
この平成18年の定義では、「攻撃」を受けたと言う表現です。現在の表現は「行為」ですが、この平成18年の時の定義では、「攻撃」じゃないから、いじめじゃないと言う、理屈になってしまいます。
また、現在の「心身の苦痛」と違い、「精神的」な苦痛という表現なので、身体に痛みがある直接的な攻撃でも、精神的な苦痛はないと学校が言い張れば、いじめじゃなくなります。
平成6年の「いじめ」の定義
「いじめ」とは、「(1)自分より弱い者に対して一方的に、(2)身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、(3)相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」とする。
なお、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと。
この平成6年のいじめの定義では、学校が屁理屈をいえば、いじめじゃなくなります。
この平成6年の定義では、「自分より弱い者」なので、対等の関係だと言えば、いじめではなくなります。「一方的に」なので、お互いだと言えば、いじめではなくなります。
「継続的」なので、継続性がないと言えば、いじめではなくなります。「深刻な」なので、そこまで深刻ではないと言えば、いじめではなくなります。
このように、この平成6年の定義では、学校が、いじめと認めたくなければ、いくらでも屁理屈を言って「いじめではない」と主張できてしまいます。
そのため、いじめの定義が平成18年に改められたのです。
昭和61年の「いじめ」の定義
「いじめ」とは、「(1)自分より弱い者に対して一方的に、(2)身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、(3)相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わないもの」とする。
この昭和61年の定義では、いじめを「学校としてその事実を確認しているのも」に限定しています。
つまり、学校が知らないなら、いじめではなくなります。
この時代は、学校は事実を確認しなければ、いじめじゃないので、学校が知らんぷりすれば、いじめはなくなります。
いじめをなくすには、学校の先生が、事実確認をしなければ、良かったのです。
なんとも奇妙な仕組みなので、いじめを隠して責任逃れをする学校に、この仕組みを悪用されてしまい、いじめの定義が改正されました。
今の時代では考えられませんが、いじめを学校が認めない、いかにも昭和の発想ですね。
4、「いじめ」への学校の対応、法律で決まっている。
「いじめ防止対策推進法」で学校の先生の対応が決められています。
「いじめ」への学校の先生の対応は、どうあるべきか?
「いじめ」の予防や、いじめがあった時に、学校がとるべき対応も、いじめ防止対策推進法の中で決められています。
法律で決められた対応を学校がしなければ、当然、法律に違反する行為、つまり、学校による違法行為となります。
「いじめ防止対策推進法」
第8条 学校及び学校の教職員は、基本理念にのっとり、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、児童相談所その他の関係者との連携を図りつつ、学校全体でいじめの防止及び早期発見に取り組むとともに、当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。
まずは、この「いじめ防止対策推進法第8条」で、学校の先生の責務が決められています。
いじめの防止と早期発見に取り組むこと、そして、いじめと思われる時には、「適切かつ迅速にこれに対処」と決められています。
第23条 第1項 学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。
このいじめ防止対策推進法第23条では、いじめの相談を子供から受けた先生や保護者は、学校へ通報することが決められています。
いじめの話を子供から聞いた親は、学校へ通報する義務があるのです。
学校は、いじめの事実の有無の確認を、拒むことはできません。
学校は、いじめの通報を受けた時には、速やかに、いじめの事実の有無の確認を行うと決められています。
いじめ落書きなどの、加害者が不明な場合、加害者の確認行為は、事実確認のために絶対に必要なことです。
このような加害者の確認行為は、いじめ加害者の「犯人探し」となるので、「犯人探しはしない」「他の子供と信頼関係が崩れる」と言って、学校の先生が事実確認を拒む場合があります。
しかし、このいじめ防止対策推進法第23条第2項によって、学校の先生には「速やかな事実確認」を行うと決められています。
学校の先生は、たとえ、犯人探しとなったとしても、いじめの事実の有無の確認を、法律で決められている以上、拒むことはできないのです。
このいじめ防止対策推進法第23条第3項では、いじめに対する措置として、次のことが決められています。
- いじめをやめさせる。
- いじめの再発を防止する。
- 複数の先生で対応する。
- 専門的な知識を有する者の協力を得る。
- いじめを受けた子供やその保護者への支援
- いじめを加えた子供やその保護者への指導・助言
- これらの措置は、継続的に行う。
例えば、「いじめの再発を防止する」ことの具体的な内容は、それぞれの学校や教育委員会が定めている、基本方針やマニュアルを参考にしながら決めていきます。
東京都教育委員会では、いじめに対処する具体的な方法をまとめた、「いじめ総合対策」というマニュアルを作成しています。
いじめを受けた子を守るのが、この第23条第4項です。
この第23条第4項では、いじめを受けた子を守るために、加害者を教室から別室へ移動させるなどの、被害者が安心する措置を行うことを決めています。
学校は、親への対応にも責任があります。
この第23条第5項では、被害者と加害者の保護者同士での争いがないような措置を、学校が講ずることを決めています。
保護者同士の争いを防ぐのも「学校の責任」ということです。
「保護者同士のことなので、学校は関係ない。」とは、先生は言えません。
子供への対応だけではなく、保護者への対応も、学校の先生は責任を持たなきゃいけないのです。
5、いじめに対応しない学校への対抗策
学校が対応しない時の対抗策は、この3つです。
- 1、法律上の正式な「いじめの定義」を指摘する。
- 2、対策をしないのは、違法行為だと指摘すること。
- 3、いじめ対策のマニュアルをチェックすること。
対抗策1、法律上の正式な「いじめの定義」を指摘する。
いじめ防止対策推進法第2条の「いじめの定義」を指摘しましょう。
学校の先生が、いじめと認めない時には、学校の先生の、個人的で勝手な解釈で、いじめに該当するかを判断している場合には、正式な法律上の「いじめの定義」を、きっぱりと指摘しましょう。
「いじめ」かどうかを判断するのは、法律上の正式な定義だけです。
学校の教員の独自の見解で、「いじめ」かどうかを判断するなんて論外です。
そもそも、学校がいじめの発生を認識すると、教育委員会への報告が義務付けられています。
そのため、先生は面倒臭いと判断して、いじめを認めたくないのです。
どんな些細な行為のいじめであっても、学校内での処理で、終わらせることはできません。校長先生を通じて、教育委員会まで報告するとなると、いじめの内容をまとめた報告書を作成しなければいけません。
いじめは、ほんの些細なことから、自殺などの予期しない重大な事件に発展することが、過去の教訓から、わかっています。
そのため、いじめ防止対策推進法では、些細ないじめでも、学校や教育委員会が組織として、いじめを把握し、いじめを見守り、解決につなげると決めているのです。
いじめに対して、学校の先生の個人的な考えや持論があったとしても、法律で決まっている以上、必ず法律を守らないといけません。
ましてや、公立の小中学校であるなら、学校の先生は公務員です。
学校の先生の個人的な持論なんて、全く無意味です。
いじめ防止対策推進法第2条の「いじめの定義」を指摘しましょう。
対抗策2、違法行為だと指摘すること。
いじめ対策をしないことは、法律に違反する違法行為だと指摘しましょう。
学校がいじめに対応しないのは、「学校による違法行為」であり、「教員による違法行為」であることを、きっぱりと指摘しましょう。
「いじめに対する措置」は、いじめ防止対策推進法の第23条で明確に決められています。
つまり、学校がいじめに対応しないのは、いじめ防止対策推進法第23条に違反する、違法行為です。
いろいろと先生が言い訳をするなら、「法律に従うのか、法律に違反するのか、先生、あなたはどちらなのか?」ときっぱりと、指摘しましょう。
対抗策3、いじめ対策のマニュアルをチェックすること。
具体的な取り組みのマニュアルで、学校が実行した対策をチェックしましょう。
学校いじめ基本方針
各学校には、その学校の「いじめ基本方針」があります。
いじめ防止対策推進法には、いじめを「やめさせる」「再発を防止する」と書かれていますが、具体的な内容は書かれていません。
学校の先生が実際に行う、いじめに対する措置の具体的な事例は、それぞれの学校が決めた「いじめ基本方針」に書いていることを実行します。
「いじめ基本方針」とは、いじめ防止対策推進法第13条に基づき、その学校の実情にあった、いじめを防ぐための対策の方針を定めるものです。
多くの学校で、その学校のホームページで「学校いじめ基本方針」を公開しています。
学校のHPで公開していない場合は、先生に「学校いじめ基本方針を見せてください」と言えば、見せてもらえます。
さらに、その地域の教育委員会が、学校の先生が実行する具体的な行動を解説したマニュアルを発行している場合もあります。
「学校いじめ基本方針」を実行しているかチェック。やってなければ指摘しましょう。
「学校いじめ基本方針」で決められた、いじめを「やめさせる」「再発を防止する」具体的な内容を実行しているかを、確認しましょう。
学校の先生が、自校の「学校いじめ基本方針」で決めた行動を怠っている場合は、速やかに実行するように指摘しましょう。
「学校いじめ基本方針」で決めた行動を怠るのは、法律で決められたことに違反する、違法行為です。
もし、万が一「学校いじめ基本方針」がないと言ったら、「いじめ防止対策推進法第13条に違反している」と指摘しましょう。
いじめ対策のマニュアル、東京都の例
東京都が決めている、いじめ対策のマニュアルです。
- 1、東京都いじめ防止対策推進条例
- 2、東京都いじめ防止対策推進基本方針
- 3、東京都教育委員会いじめ総合対策
- 4、学校いじめ基本方針
1の条例は、東京都が、いじめ防止について、独自に定めたものです。ただ、この条例は、法律と内容がほとんど同じで、具体的な指導方法は書かれていません。
2の基本方針とは、いじめ防止対策推進法の第11条・第12条・第13条に基づき、国(文部科学省)と自治体と学校が、それぞれ定めるものです。
この東京都教育委員会が作成した基本方針では、法律に比べて、より具体的な行動内容が書かれています。
3の「東京都教育委員会いじめ総合対策」に、学校の先生が、いじめ対策として、実際に行う行動について細かく解説が書いています。
この東京都教育委員会いじめ総合対策は、平成26年に作成され、現在は第2次となっており、上巻の「学校の取組編」と、下巻の「実践プログラム編」があり、上巻と下巻を合わせると250ページを超える資料です。
いじめの「未然防止」「早期発見」「早期対応」「重大事態への対処」の4つの段階ごとに、学校おける具体的な取組を示した内容です。
東京都の公式ホームページでも公開されているので、誰でも読むことができます。
もちろん、東京都でも、それぞれの学校では、4の「学校いじめ基本方針」を決めています。
もし、学校がいじめに対応しない時には、この4つの資料・マニュアルを学校の先生に突きつけて、学校が実行すべきことをチェックしましょう。
6、まとめ、いじめに対する措置
学校がいじめに対応してくれない時のまとめです。
- いじめとは、どんな行為かは、法律で正式に決まっています。
- 「いじめの定義」は、いじめ防止対策推進法第2条。
- いじめの定義には、4つのポイントがある。
- ちょっとした悪口でも「いじめ」になる。
- いじめの件数が多いのは、意識が高くて良いこと。
- いじめ防止対策推進法は、平成25年にできた。
- いじめの定義は、現在と過去では違っている。
- 「いじめ」への学校の対応は、法律で決まっている。
- 「いじめ防止対策推進法」で学校の先生の対応が決められている。
- いじめの相談を子供から受けた先生や保護者は、学校へ通報する。
- 学校は、いじめの事実の有無の確認を、拒むことはできない。
- 学校は、親への対応にも責任があります。
- 学校が対応しない時には、3つの対抗策がある。
- 対抗策1、法律上の正式な「いじめの定義」を指摘する。
- 対抗策2、対策をしないのは、違法行為だと指摘すること。
- 対抗策3、いじめ対策のマニュアルをチェックすること。
- 各学校には、その学校の「いじめ基本方針」があります。
3つの対抗策を指摘して、学校には、しっかり、いじめに対応してもらいましょう。