発達障害は、こんな診断方法、調査項目で、専門の医師が判断しています。
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<目次>、発達障害の診断方法は?
- 1、行動観察や、質問形式が基本
- 2、知能検査も実施する。
- 3、これが検査項目です。
- 4、DSM-5、精神疾患の診断・統計マニュアル
- 5、1回の検査で、診断が確定しないことも。
発達障害の診断方法は?
発達障害の診察は、専門の医師が、生育歴、家族・家庭環境、出生児の状況など、また知能検査などを組み合わせて、総合的に診断します。
本人の行動を観察して診断している。
診察は、本人の行動を全て観察しています。
診察室に入って時から、その様子が全て観察されているのです。
あいさつの様子、顔の表情、目線の様子、全ての挙動が、診断の対象になります。
幼児や小学生などの幼い子供の場合は、子供を遊ばせて、その遊ぶ様子を観察することで、発達障害を診察します。
診断は医師のと会話や、質問に答える形式で進む。
発達障害の診察は、基本的に医師との会話形式で進んでいきます。
現在の状況や、生まれた時から今までの発育状況など、聞かれた質問に答えていきます。
幼児や小学生で、本人が質問に答えられない場合には、保護者が代わりに質問に答えます。
なぜ、生まれた時からの様子が診断対象なのか?
発達障害は、生まれつきの障害が原因です。
そのため、程度の差はあっても、発達障害は、小さい頃から、その特徴が見らるはずなのです。
逆に、統合失調症などの精神疾患は、生まれつきの原因ではないので、小さい頃には、その特徴が見られないはずなのです。
知能検査も実施する。
直接的には、発達障害の症状とは、関係ありませんが、発達障害と知的障害は、並存することがあります。
知能検査の結果で、知的能力IQが低いのは、知的障害です。
自閉症スペクトラムでは多くの場合、知的障害を並存することが多くあります。
対人関係が苦手な発達障害の自閉症でも、知的な遅れがあれば自閉症と呼び、知的な遅れがなければ高機能自閉症と呼んでいます。
発達障害を診断する上で、知的障害との違いを把握すること、また、知的能力の偏りなどを、知能検査で評価します。
知能検査の方法には、田中ビネー式、ウェクスラー式などがあります。
また、対象年齢による検査方法の違いもあり、ウェクスラー式の中でも、幼児向けのWPPSIウィプシイ、児童向けのWISCウィスク、成人向けのWAISウェイスに区分されます。
その他の検査
てんかんの合併を調べる脳波検査や、脳そのものの状態を調べるCTやMRIなど断層撮影の検査、脳の血流状態の検査などを実施する場合もあります。
これが検査項目です。
医師からの聞き取り調査には、会話ができる年齢であれば、本人が医師の質問に答えます。
幼児や児童の場合は、保護者が医師の質問に答えます。
- 妊娠中や出産時や乳児の様子は母子手帳
- 幼稚園の先生が書いた子供の生活の様子のコメント
- 小学校になった後は通知表
このような記録は、発達障害の診断にとって重要な客観的な資料となるので、診断を受けるときには、医師に提出しましょう。
どんな問題があるのか。
- 対人関係が苦手。
- 協調性がない。
- 落ち着きがない。
- 会話が噛み合わない。
- 勉強が苦手。
現在、どんな問題があるのか、また、その問題は、いつ頃から始まったのかを、医師が聞き取ります。
内容を聞いた医師は、その問題が発達障害が原因なのかを、他の聞き取り内容と総合的に判断して診断します。
これまでの病歴
これまでに、どんな病気にかかってきたかを医師が聞き取りします。
かかった病気の経過や、治療の状況など、また、大きな病気の場合は当時の症状を医師に伝えます。
出産の状況
出産の時のトラブルも、発達障害との関連が指摘されています。
自然分娩、無痛分娩、帝王切開などの分娩の種類。
早産や過期妊娠、仮死状態や未熟児など、子供が生まれて時の状態を聞き取りします。
小さい頃の様子
乳児から現在まで成長するまでの、幼い頃の行動の特徴などを医師が聞き取りします。
発達障害は、生まれつきの障害が原因なので、現在の問題点は、幼い頃にも似たような状況があったはずです。
幼い頃の状況から、発達障害の手がかりを探していきます。
家族の遺伝的な要因
発達障害の原因は、遺伝が全てではありません。
しかし、遺伝も重要な原因の一つと考えられています。
そのため、発達障害の診断では、両親や兄弟姉妹に発達障害の特徴があるかや、両親の性格や職業や学歴なども、聞き取りします。
また、家族の病歴などの、遺伝的な要素を医師がヒアリングします。
家庭環境や養育環境
母子家庭、養子など、家庭環境を医師がヒアリングします。
また、両親が共働きで、ずっと子供が1人で留守番をしていたなども、特殊な家庭環境になります。
発達障害である自閉症などは、生まれつきの障害が原因です。その発達障害と、成長する家庭環境の外的要因で発症した症状とを区別するために、家庭環境の状況を医師は参考にします。
いじめやトラウマの状況
いじめを過去に受けた経験があるか。
いじめや、過去に両親の死など、精神的に大きなショックを受ける出来事があったかを、医師が聞き取ります。
強い心的障害のトラウマは、精神疾患の原因になります。
トラウマが原因の強迫性障害、心的外傷後ストレス障害PTSDなどと、発達障害を区別する参考にします。
DSM-5、精神疾患の診断・統計マニュアル
「DSM-5」とはアメリカで考案された、発達障害を診断するマニュアルです。
DSM-5では、自閉症スペクトラム障害、ADHDなどの種類によって、チェックリストがあります。
その発達障害の特徴のチェックリストの項目に、何個以上該当すれば、その種類の発達障害と診断すると決められています。
このDSM-5の結果だけで、発達障害を診断することはありませんが、多くの場合で、聞き取り調査や、行動観察と併用されて診断しています。
1回の検査で、診断が確定しないことも。
発達障害の診断では、1回の検査だけでは、診断が確定しないこともあります。
発達障害の程度が重く、過去の発育歴などから、明らかに障害が判断できるときには、時間はかからず、1回の検査で終わることもあります。
しかし、過去の発育れきが不明な場合や、発達障害の程度が軽くて線引きが難しい場合などは、1度の検査だけで診断を決めることができません。
そんな場合には、追加の検査を実施したり、診断の確定まで、時間をおいて、再検査を実施する場合があります。
発達障害の種類は変化する。
発達障害の種類の診断名は、診断の結果によって、変化する場合があります。
発達障害は、複数の症状が並存する場合が多く、その診断の時点で顕著だった症状を、診断名にします。
例えば、自閉症とADHDが並存する発達障害の場合は、ある時は自閉症と診断されても、別の診断ではADHDとなることも考えられます。
また、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群は、総合的には自閉症スペクトラムに分類され、どんな専門的な医師でも、明確な区分けが困難です。
発達障害の診断名にはこだわらず、何かの発達障害があるんだと、広く捉えるようにしましょう。