子供が小さいうちに、発達障害を発見すれば、二次障害を防げます。
発達障害の現れ方、年齢別の特徴
それぞれ年齢別での、発達障害の特徴の現れ方です。
発達障害の特徴は、3歳くらいから目立ち始めます。
もちろん、発達障害の種類や、症状の強弱によって、特性の現れ方には違いがあります。
1歳からの発達障害の特徴の現れ方
2歳にならない、1歳までのうちに、発達障害の有無を判断するのは、難しいことです。
しかし、2歳までに、発達障害の特徴が表れていることもあります。
自閉症やアスペルガー症候群など、自閉症スペクトラム障害の特徴を持つ子の場合には、人間関係が苦手で、感情を伝えるのが苦手な特徴があるため、泣いたり、駄々をこねたりしないのです。
お腹が空いても泣かなかったり、オムツが濡れても一人で静かに寝ていることもあります。
発達障害で、こんな特徴を持つ子は、母親にとったら、逆に、育てやすい子と感じる場合もよくあります。
2歳までの時期でも、発達障害が原因で、度を超えて、泣いたり、寝つきが悪かったりで、母親が困り果てる場合もいあります。
- 母親と視線を合わせない、母親を追いかけない。
- 一人で寝ていても寂しがならない。
- 抱きしめると嫌がる。
- 笑わない、泣かない。
- ほとんど寝ない。
- いつでも泣き続ける。
- 言葉を発しない。
2歳からの発達障害の特徴の現れ方
2歳くらいになると違いが出てきます。
2歳くらいになると、発達障害を持つ子は、他の子との違いが、はっきりし始めます。
「ママ」と呼び始めたり、喃語を話し始めるのが、2歳くらいです。
しかし、自閉症やアスペルガー症候群の子の場合は、言葉を全く話さないことで、発達障害の特徴が表れます。
また、母親と視線を合わせない、一人だけで遊ぼうとするなどの特徴も、2歳くらいから見られ始めます。
3歳からの発達障害の特徴の現れ方
発達障害の特徴がはっきりあわられてきます。
3歳くらいになると、自閉症スペクトラム障害やADHDの特徴などが、はっきりと現れるようになります。
気になることをが目立ち始めるのが、3歳くらいの時期です。
母親の言う言葉が伝わらなかったり、こだわりが強くて、子育ての難しさを母親が感じるようになります。
- 一人で遊び続ける。
- 母親が名前を呼んでも反応しない。
- 気に入ったものに強くこだわる。
- 偏食が激しい。
- 落ち着きがない。
5歳からの発達障害の現れ方
集団生活の中で、問題行動に悩む時期です。
保育園や幼稚園に通い始めて、5歳くらいになると、集団生活の中で、発達障害の特徴が、はっきりしてきます。
- 集団行動ができない。
- 落ち着きがなく、じっとしていられない。
- 使える言葉が少ない。
- 周囲のお友達の気持ちがわからない。
- こだわりが強すぎる。
- かんしゃくをすぐに起こす。
幼稚園や保育園の先生と連携して、発達障害に対応しましょう。
集団生活を始めると、子供の問題行動に気がつくことが多くあります。
幼稚園などの集団行動では、同年齢の他の子と比較する機会が増え、対人関係の弱さなどの発達障害を持つ子の特徴が、わかりやすくなります。
幼稚園などで、落ち着きがなく座ったまま我慢できなかったり、お友達とのトラブルが絶えなかったりすると、母親より先に、幼稚園の先生が、子供の発達障害に気がつくこともあります。
また、就学前などの定期検診で医師から指摘されることもあります。
保育園や幼稚園の先生や、健診などで、発達障害の可能性を指摘された場合には、早めに専門機関に相談をしましょう。
幼稚園や専門機関などで見えてくる子供の特性と、母親が普段の家庭での生活で感じている子供の特性を重ね合わせることで、発達障害を持つ子への理解が、より一層進みます。
気になる発達障害のサインがあれば、保育園に相談したり、役所が設置している子育てを支援してくれる施設などに、早めに相談しましょう。
なぜ、早期の発見が必要なのか?
発達障害を発見すると、子供が可哀想なのか?
子供の発達障害の特性を早期に理解すれば、子供の個性を伸ばす支援ができる。
「小学校入学前なのに、発達障害だと決めつけるのは、子供がかわいそうだ。」
「たとえ、発達障害であっても、診断なんて受けなくてもいい。」
このように考える親は多くいます。
もちろん、発達障害を持つ子でも、専門機関の診断を受けなくても成長して、日々の生活に、ほとんど問題がないくらい成長できる子もいます。
ただし、そんな子は、もともとの発達障害の度合いが少なく、支援がなくても成長できたと考えられます。
なぜ、発達障害を早期に診断する必要があるかと言うと、親から見たポイントと、子供から見たポイントの、2つのポイントがあります。
親にとっても、子供にとっても、早期発見は大切です。
子供の発達障害の特性を、親が知らなければ、親は「なぜ、うちの子は、他の子と違うのだろう?」と子育てに悩み、ストレスを溜めて、イライラしてしまいます。
その結果、子供にキツイ言葉を浴びせたり、子供に手をあげる場合もあります。
また、夫婦で子育ての意見が対立し、夫婦間の仲間で悪くなってしまいます。
子供にとっては、親から叱られてばかりになり、自尊心が育たず、成長できません。
いつも不安な気持ちになり、ますます、親が苛立つ行動をして、負のスパイラルの悪循環になります。
早いうちから子供の発達障害の特性を理解すれば、適切な支援が可能です。
障害を持つ子供を支援することで、その子の不安を解消し、その子が持つ能力を伸ばすことができます。
子供が成長することで、親も子育てにストレスがなくなります。
早い段階で、発達障害を発見することは、親子が日々暮らしやすくなる効果があります。
早期発見で、二次障害を防ぐ。
二次障害を防ぐためには、早期発見が絶対必要です。
発達障害を持つ子は、障害によって、生活の中で、いろんな苦しい経験をします。
そんな苦しい経験によって、悩みを抱えて、二次障害と呼ばれる問題も起こります。
発達障害の二次障害とは、発達障害の問題行動が原因で、精神的なストレスを抱えた結果、発達障害と直接関係のない、新たな問題が発生することです。
たとえば、発達障害が原因で対人関係が苦手な子が、お友達になじめず、自尊心が傷つくことによって、ますます人前に出ることが不安になり、精神的に鬱状態になってしまいます。
精神的な二次障害が原因で、不登校や、引きこもりになる場合もあります。
親としては、子供が発達障害の診断を受けることが、嬉しいはずがありません。
発達障害と診断されることで、子供とどう接していいのか戸惑うのが当たり前です。
しかし、発達障害による二次障害で、子供が精神的に追い詰められることのないように、早めに専門機関の診断を受けた方が、子供の支援をサポートできます。
なぜ、発達障害の二次障害が起こるのか。
叱られてばかりじゃ、二次障害の問題行動が起こります。
発達障害を持つ子が、その障害の特性を理解されないまま、小学校、中学校、高校と、年齢が上がると、親や周囲の人から自分が受け入れられない対応に傷つき、自尊心や自己肯定感情が育たずに、心理的・精神的での、様々な問題を生じます。
発達障害と知的障害を併せ持つ子の場合は、小さい頃から、障害を発見されやすいです。
しかし、特に、発達障害の程度が軽度であり、知的障害がない子の場合には、発達障害と気がつかれないまま、成長していきます。
発達障害に気がついてもらえないと、小さい頃から、親や先生から叱られてばかりになります。
「誰も自分をわかってくれない。」「自分はダメだ。」などと、一人で孤立してしまいます。
その結果、自信を喪失し、劣等感に悩み、二次障害の、不登校や引きこもり、反抗的な態度などの問題行動が起こります。
このような二次障害は、子供の発達障害への本来の支援ができなくなるので、ますます、根本的な支援から遠ざかる一方になります。
親子ともに、負担が増えてしまいます。
子供を個性を認めることが、二次障害への対応。
子供が安心感を持つと、二次障害がなくなります。
「自分は大切にされている。」「自分は認められている。」と、発達障害を持つ子が感じることで、発達障害の二次障害は防げます。
二次障害を防ぐためには、親や学校の先生などの、発達障害を持つ子の周囲の大人が、その子の特性に早く気がつき、適切な支援をすることで防げます。
子供が安心感を持つと、自尊心が芽生え、自己肯定感情とともに、二次障害の可能性がなくなります。
発達障害の原因は、育て方や躾ではない。
発達障害の原因は、生まれつきの脳の機能です。
落ち着きがない子供や、他の子と仲良く遊べない子供は、周囲の親たちから「育て方が悪い」「しつけが悪い」と非難されることがあります。
しかし、発達障害を持つ子の問題行動は、親の育て方やしつけが原因ではありません。
発達障害の原因は、現在の医学でも、完全には判明していません。
しかし、まだ完全には明らかになっていない部分はあっても、脳の機能障害が、発達障害の原因であることは、知られています。
人間の脳には、前頭葉、側頭葉、小脳などの、それぞれの部分に、様々な機能があり、重要な役割があります。
理論的な思考や、計画的な行動を司るのは、前頭葉です。
感情や記憶は、側頭葉の役割で、運動機能は、小脳の役割です。
これらの脳の部分を脳内神経が結び、脳の機能が連携して人間は行動しています。
発達障害は、脳の機能の一部や、脳が連携する部分に、障害があることが原因だと考えられています。
遺伝も発達障害の原因の一つ。
遺伝も原因の一つです。
発達障害には、遺伝的な要因も、原因の一つと考えられています。
しかし、遺伝だけが、発達障害の原因ではありません。
遺伝は、多くの要因のうちの一つであって、遺伝で全てが決まる訳ではありません。
たとえば、両親や兄弟姉妹が発達障害であれば、その子供も発達障害を持つ割合が高くなる調査結果があります。
また、遺伝子が同じである一卵性双生児の場合は、どちらかが発達障害であれば、70%の確率で、双子のもう一方も発達障害というデータがあります。
しかし、発達障害の原因が完全に遺伝だとは言えません。
発達障害の原因が遺伝だけであれば、遺伝子が全く同じである一卵性双生児の双子は、どちらかが発達障害であれば、もう一方も発達障害になるはずです。
一卵性双生児であっても、どちらかが発達障害であっても、30%の確率で、もう一方は、発達障害ではないのです。
体形や顔立ちは、親から子供へと、ある程度は遺伝します。
しかし、親子で体形や顔立ちは、全く同じにはなりません。
脳内の機能や、行動パターンも、ある程度は遺伝すると考えられますが、完全に遺伝する訳ではないのは、当たり前のことです。
特定の化学物質も発達障害の原因の一つ。
特定の化学物質も、原因の一つと指摘されています。
発達障害には、特定の化学物質も、原因の一つと考えられています。
母親が妊娠中に喫煙していると、その子供は発達障害のADHDの割合が高いというデータがあります。
しかし、ADHDの人が喫煙する割合が高いので、その母親から生まれてくる子供がADHDである割合が高くなるのは、遺伝的な要因ではないか、という指摘もあります。
テレビばかり見ると発達障害になるのか?
ダラダラとしていても、それで発達障害になる訳ではありません。
小さい頃にテレビばかり見ているから、人と接することが苦手な自閉症になると考える人がいますが、その考えに科学的な根拠はありません。
もともと自閉症の傾向のあった子が、多かれ少なかれテレビを見ると、自分の世界に入ってしまい、テレビに強い関心を持ってしまうのは、仕方のないことです。
テレビを見ると自閉症になるのではなく、自閉症の子がテレビを見て興味を持つと、自閉症の特性で、テレビに強いこだわりを持ってしまうのです。
発達障害になった原因を考えるより、子供を支援して成長させることが大切です。
原因で悩むより、子供の支援を考えましょう。
発達障害になった原因には、いろんな要因が絡んでいます。
子供が発達障害と診断されると、母親は原因は何かと悩みます。
遺伝や家庭環境、子育て方法など、原因を探しては、母親は悩みを抱え込んでしまいます。
しかし、発達障害は脳の機能の偏りが原因です。
母親の愛情が足りないから、発達障害になる訳ではありません。
子供が成長できるために、どんな支援をするかが重要なのであって、原因を考える必要はないのです。
早めに専門機関に相談する。
母親は、自分の子供が発達障害と診断されることが不安です。
「もしかして発達障害かも」と思っても、気のせいだと自分に言い聞かせたり、もうしばらく様子を見ようと、結論を先送りにして、心配事から逃げてしまいがちです。
発達障害と診断されたからと言っても、何も変わることはありません。
診断結果では何も変わらず、その後の支援によって、子供の成長が変わるのです。
早めに専門機関の診断を受けて、子供の特性に合わせた支援を始めた方が、確実に子供の成長に繋がります。
発達障害の子供の個性を伸ばす療育プログラム
発達障害を持つ子は、その子の個性に応じた、療育プログラムがあります。
子供なら誰でも、成長していく過程で、社会生活に必要なスキルを身につけていきます。
発達障害を持つ子は、そのスキルを身につけるために、ちょっとした工夫が必要なのです。
専門機関の支援を受けることで、発達障害を持つ子の成長への支援が受けられます。
発達障害を持つ子に治療と教育を行う、療育プログラムでは、日常生活を自分で行えるようにするため、食事や排泄、会話、運動などの成長を促します。
発達障害を持つ子の特性にあった療育プログラムによって、社会的スキルを身につけ、日常生活の能力を伸ばすことができます。
療育を行なっている専門機関は、全国にあります。
その施設によって、いろんな手法が活用されていて、対象としている年齢も、施設によって違います。
療育プログラムの種類
市役所などが運営する公的な専門機関では、次のような療育プログラムが実施されています。
- TEACCH・ティーチプログラム
- ABA・応用行動分析プログラム
- 感覚統合プログラム
- PECS・ペクスプログラム
これらが、日本で広く実施されている療育プログラムで、それぞれの施設によって、発達障害を持つ子の特性に応じて、療育プログラムを組み合わせて実施してくれます。
発達障害児の療育方法。感覚統合療法、遊びで脳に刺激。TEACCHティーチで構造化。PECSペクス。ABA。言葉かけ。 |
TEACCH・ティーチプログラム
多くの実績があるのが、ティーチプログラムです。
TEACCHプログラムは、主に、自閉症やアスペルガー症候群などの、自閉症スペクトラム障害の子を対象とした療育プログラムです。
自閉症スペクトラム障害の子は、言葉を理解するより、目で見た視覚情報の方が理解しやすい特徴があります。
例えば、1日のスケジュールを、一覧表にして壁に貼ることで、その日の行動の見通しが理解できるようになります。
ABA・応用行動分析プログラム
ABAは、母親が家庭でもやりやすい療育プログラムです。
ABAプログラムは、ADHD、自閉症やアスペルガー症候群の自閉症スペクトラム障害など、幅広い発達障害を持つ子を対象とした療育プログラムです。
望ましい行動をした時には、すぐにその場で「ご褒美」を与えます。
困った行動をした時には、無視します。
そうすることで、望ましい行動を増やして、困った行動を減らすことができます。
例えば、走り回って言うことを聞かない時に、大人しくさせようと、お菓子を食べさせたとします。
その子は、その後も、走り回り言うことを聞かなければ、お菓子が貰えると学習して、相変わらず、言うことを聞きません。
この逆のことを、ABAプログラムでは実行します。
走り回って言うことを聞かない時には無視して、大人しくした時だけにご褒美でお菓子を食べさせます。
その子は、その後は、言うことを聞かないとご褒美がもらえず、言うことを聞くとご褒美がもらえると学習していきます。
ABAプログラムでのご褒美は、シールやお菓子など、発達障害を持つ子が喜ぶわかりやすい物を与えます。
感覚統合プログラム
感覚統合プログラムは、親子で楽しみながら遊べます。
感覚統合プログラムは、主に、不器用で全身運動が苦手な、発達性協調運動障害、自閉症やアスペルガー症候群などの、自閉症スペクトラム障害の子を対象とした療育プログラムです。
感覚統合プログラムでは、運動遊びを通して、全身の感覚を刺激して、身体をコントロールする能力を育成します。
トランポリン、ボール遊び、ブランコ、マット運動などの、全身を使った運動遊びで、複数の感覚を同時に刺激することで、発達障害を持つ子の苦手な運動神経を改善していきます。
道具を使った運動ができない子、体のバランスが取れない子、姿勢が悪い子などの、身体能力の改善が見込めます。
PECSプログラム
コミュニケーション能力を向上させるのが、PECSプログラムです。
PECSプログラムは、主に、自閉症やアスペルガー症候群などの、自閉症スペクトラム障害の子を対象とした療育プログラムです。
カードを使って自分の意思を相手に伝達することで、総合的なコミュニケーション能力を育成します。
例えば、お菓子が欲しい時には、発達障害を持つ子に自分で「お菓子」のカードを選ばせ、相手に見せて、自分の意思を伝えさせます。
お菓子のカードを相手に見せられたら、ご褒美にお菓子を食べさせます。
次の段階では、「お菓子」のカードと、「食べたい」と書いたカードを相手に見せられたら、ご褒美にお菓子を食べさせます。
絵カードを、発達障害を持つ子自身が選び、相手に見せることで要求を伝えて、そのカードと実物の物を交換する訓練をします。
こうすることで、対人関係が苦手な発達障害を持つ子の、コミュニケーション能力を訓練できます。